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圧入工学‐理論と実践を融合した実証科学アプローチで、地中の真実の解明に挑む

見えない基礎は想像の領域

私たちの文化生活は、さまざまな建築物や土木構造物を土台に日々営まれています。つまり、それらの基礎部は単に上部構造物を支えているのではなく、そこで営まれるあらゆる活動、投入された財産、人命の安全に至るまで、私たちの文明社会そのものを支えてくれているのです。しかし、地下の基礎部は地上から見ることができません。そのため、古くから提唱されている土圧理論や支持力理論でも、科学的な実証が十分行えず、想像の領域を出ない仮説にとどまっているものも少なくありません。実際の工事でも、杭への打撃エネルギーを杭の支持力と仮想して、基礎の性能が推定されてきました。従って、“打設後の杭”と“完成後の基礎”が重要な研究対象となり、設計段階では大きな安全率を見込み、完成後は余計な費用を掛けて載荷試験を行う仕組みが定着したのです。

圧入工学

地中の現実をとらえる圧入工法

杭に静荷重を加えて地中に貫入させる圧入工法では、圧入杭と貫入地盤の間に、完成後の基礎が上部構造物を支えている状態と力学的に同じ関係をつくり出します。杭の圧入施工は、完成後に行う載荷試験と同じ機能を果たすのです。また、杭の挙動を油圧で制御する圧入機は、施工中の圧入力や杭の貫入深さ、地盤から受ける先端抵抗や周面摩擦抵抗などを機械的に自動計測します。実測値の解析によって、地中の圧入杭と地盤の関係がリアルタイムに把握されます。

つまり、圧入工法には、地中の現実を科学的に確認し、実証された理論に照らして、完成後の基礎の性能を特定する仕組みが備わっているのです。従って、地中の現実を反映させる実証科学的な設計方法(パフォーマンス・リレイティド・デザイン)が可能となり、地盤と構造物の適切な関係を構築できることから、過剰な安全率や手間と費用の掛かる載荷試験が不要となるのです。

理論と実践を融合する圧入工学

反力を基調とする圧入工法は、圧入機サイレントパイラーの発明(1975年)によって実用化され、打設工法による振動・騒音などの建設公害を解消しました。その後、圧入原理を応用した数々の機械装置や新工法が開発され、都市再生や災害対策など、難易度の高い建設分野でも広く活躍しています。しかし、全ては施工工学からの実践的アプローチであり、確固たる科学的・学術的根拠に基づいた発展ではありません。基礎の理論は、未だに係数や経験値が頼りの推論なのです。

確実な理論に裏付けられなければ、完成品質は保証されません。逆に、いかに優れた理論といえども、実践されなければ社会への貢献はありません。そこで、環境工学、機械工学、地盤工学、施工工学、計測工学など、圧入工法に関連する幅広い専門分野で連携を図り、圧入工程における杭の貫入メカニズムを工学的に解明し、理論と実践を融合した実証科学アプローチを実現します。各分野の専門家たちが垣根を越えて横断的に取り組めるよう、圧入を機軸として地中の真実を解明するこの研究分野を、新しく「圧入工学」と命名しました。

持続可能社会を実現する新技術の創出

圧入工学の探究と圧入工法による実証で、杭の挙動と土粒子の関係、杭の材質・形状・長さと地盤の関係、施工方法と支持力の関係、基礎の構造と耐震性の関係など、構造物の根幹に関わる種々の事項が理論化・体系化できます。この実証科学アプローチによって、持続可能社会の実現を見据えた新奇性・発明性に溢れる新技術の創出が可能となります。地面との接触面積を最小にする技術、仮設工事を不要にする技術、日常生活に支障をきたさず都市機能を再生する技術、既存の地下構造物を撤去せず基礎を再生する技術、機能を主軸に構造物に長期ライフサイクルを設定する技術などです。同時に、実測値を解析し地中を可視化します。文明社会を支える基礎だからこそ、その性能を科学的に実証し、誰もが理解できる状態にして広く開示し、責任と品質を社会で共有できる仕組みを確立するのです。このように圧入工学は、“環境と文明の共生を図る持続可能社会”を実現するための、実証科学的な原動力なのです。